屋久島七五岳北壁の開拓に行って来ました。昨年2回の単独偵察とボルト打ちに合計8日間。今回もパートナーとしてYK姉とGんの3人で4日間の山籠りも無事に終了して本日下山しました。
疲れたけど、懸案事項のルート開拓は全6ピッチ1発でRP出来て完成しました!
初日は季節外れの大雨長雨の直後ということもあってか、アプローチの登山道標高800mから1200mぐらいまでヤマヒルぢごぐ。3人ほどもれなくそれぞれトータル20匹ぐらいのヒルに抱きつ常に最所のしながら歩いたらおかげで献血までは至らずに済んだ。屋久島の自然度の高さを思い知る。
2日目は日の出から快晴。
さっそく昼過ぎまでかかって3本のフィックスロープを200m張って、昨年11月にやりきれなかったボルト打ちやラインの整備をする。
掃除はほとんど無しでOKなラインなのだが、ルートの出だしは、やはり歩いて取り付きから行けるように3mほど左に振り子して草付きからスタート。そのために少し掃除。最初のトラバースのキーホールドとなるアンダーフレークが少しボロくて何度か蹴りを入れたけどなんとか使えそうなのでホッとする。これがないとけっこうボルダーライクな極端に難しくなりそうだったのでひと安心。
取り付きへは登山道はなく、野生の勘が働くクライマーなら問題なく行ける獣道がある。
が、しかし、
今回のラインは基本的に頂上からラッペルで取り付くのがお薦めです。
午後2時からYK姉、Gんらと懸垂開始。
この頃には深い霧に包まれてしまって湿度マックス。それでも強い上昇気流がないだけまし。
昨日の荷揚げと午前中の作業疲れからで、1ピッチ目の出だしから親指、人差し指、小指がツリまくってクリップがまともに出来なくて怖かった!
ホールディングも長石を摘まむ系がほとんどなので、とにかくツリまくる。
疲れて弱った身体にいきなりな難しさだったけどなんとか落ちずに済んだ。
2ピッチ目、3ピッチ目は続いてカンテ上のライン取りなので分かりやすいし非常にスッキリしている。
3人パーティーだしGんも慣れていない(初めての)マルチピッチクライミングということもあって2日目は3ピッチRPしたところでタイムオーバー。
それぞれユマールで頂上へ。
自分だけは胸に取り付けたマイクロトラクションで試登しつつ日没後の1930頂上へ。
全身バキバキながらもムチ打って3日目。
ストレッチ多目にしてから再び3人で懸垂下降。
朝イチ、いきなりこのルート最難ピッチにトライ。
傾斜は85度ぐらいだが被って感じる。
奇跡的につながって散りばめられている長石を、超テクニカルなムーブでひとつひとつこなしていく。何度もあきらめそうになるけど、32年間のクライミング歴が、あきらめるな!と励ましてくれる。
昨年、先に天国に逝ってしまったTピロと約束したこの壁の開拓。
手指はツリまくるけど何故か不思議とムーブは出来る。
息もあがるけどなにか背中をスポットしてくれている感触を感じていた。
きっとTピロもあちらの方から応援してくれていたんだろうなあ。
核心の4ピッチ目の終了点テラスに這い上がると、自然に声が出た。
続く5ピッチ目。個人的には一番気に入っているマントルの連続するピッチ。
ひとつひとつのマントルを噛み締めながら登れるぐらいの余裕を残しながら、いま、生きている素晴らしさを不思議と登りながら感じていた。
最後のオフセットしたクラックは全くのオンサイトトライ。
とはいえ簡単(笑)
8年前の障子岳最終ピッチのビンタ岩を登っている感覚。
クライミングとしては取るに足らない内容だけど、頂上直下のテラスに1歩1歩登っていく感覚は説明出来ない筆舌に尽くせない喜びを感じた。
ふたりのフォローをビレイしながら、
初めて屋久島に来てモッチョム岳開拓に始まったこの19年という月日の流れがめくるめく。
いろいろあったけど、
いまはこうして幸せな気持ちで満たされていればいいや、というシンプルな気持ちでいられることが心地よい。
YK姉、Gんはもちろんだけど、ここに至るまでビバ2のKさいさんをはじめとする屋久島の皆さん。そして日頃の仕事仲間のストーンマスターズの面々。
みんなの協力あっての自分なので、ここで改めて感謝いたします。
ありがとうございます。
屋久島三大岩壁と呼ばれる
モッチョム岳南壁
障子岳南西壁
七五岳北壁
本日ついにオリジナルルートかつすべてフリークライミングのルート開拓に成功出来ました。
50歳を直前にして、ひそかに抱いていた「夢」が達成出来たことがなにより嬉しい。
今回のルート解説
1P 5.11d 30m 11BOLTS
2P 5.10d 35m 14B
3P 5.11a 30m 11B
4P 5.12d 25m 11B
5P 5.11C 30m 7B
6P 5.9 18m スモールカム
頂上北側の大テラスから懸垂で取り付くのが一番スマート。
もちろん東稜取り付きを経て右上樹林バンドを歩いて取り付くのもOK。その際にはちゃんとしたアプローチシューズと5.10aぐらいのフリーソロが出来る実力があれば安全にかつスピーディに頂上から1.5時間以内に取り付きまで行ける。
懸垂する場合は70mロープ必携。
各終了点は必ず2本のハンガーボルトと残置カラビナを残してある。
終了点ならびにすべてのプロテクションボルトは70ミリ長さ10ミリ直径のグージョンタイプのアンカーにペツルのハンガーをスプリングまたは平ワッシャーで固定しておいた。すべての材料はステンレスなのでこの先50年以上は強度的に問題ないだろう。
ルート名は
影の山
おそらくほとんど人目に触れられることのない地形的な理由と、それゆえに屋久島で一番大きな花崗岩の1枚岩に関わらず昭和45年にエイド初登以来、ほとんどエイドか、それに近いクライミングの記録しかないあまりにも「忘れ去られた岩」だった。
唯一、昭和50年に福岡GCCにより初登された東稜ルートがいまだ褪せることなくひかり輝いている。
200m近いきれいな岩稜をたどるラインは、初登パーティはなんと中間部に半打ち1本だけのビレイ用リングボルトのみのフリーで登っている。おそらく当時ではまだ登山靴での登攀と思われるので、なおさら畏敬の念を感じる。
これに近年ラッペルボルトが大量に打ち足されたが、このルートの荘厳さは失われていない。
自分は昨年、オンサイトフリーソロをしたが、グレード的には5.9(最上部のみ)の範疇を出ることはなく、ほとんどが5.6から5.8に収まる。
パーティで登っても、オリジナルな登り方であればフリーソロとなんら違わないので、もっと独りで山の長い岩登りを求めているクライマーには是非登ってほしい、日本を代表する素晴らしいルートだと強く推薦するルートである。
長くなったが、分からないことや興味のある方は自分に質問してください。
質問ある方は、なんとか連絡先を見つけて下さい(笑)
そしてだまされたと思って是非登りに行って欲しい!